2021 年 73 巻 3 号 p. 271-276
帝王切開瘢痕症候群(cesarean scar syndrome;CSS)は帝王切開創部の陥凹性瘢痕が原因で不正出血や疼痛を呈する疾患であるが,いまだその病態や治療法は明らかではない.今回われわれは,内分泌療法後に外科的介入したCSS症例を経験したので報告する.症例は33歳,2妊2産(帝王切開術2回).前回帝王切開術後より排尿時痛を認めたため当院受診した.血液検査で炎症反応の上昇を,骨盤部MRI検査で子宮筋層の菲薄化(1.0 mm)と血性成分と思われる液貯留(径25 mm)を認めた.抗菌薬(セフトリアキソンナトリウム2g/日)およびgonadotropin releasing hormone(GnRH)アゴニスト(1.88 mg/4週毎,皮下注)を投与したところ,炎症反応は低下し液貯留は消失した.GnRHアゴニスト3サイクル後に残存子宮筋層厚は4.8 mmとやや改善した.不正性器出血や月経痛は改善したものの,排尿時痛は改善しなかったため外科的介入とした.腹腔鏡下に子宮峡部の陥凹性瘢痕部を切除し,筋層を2層縫合した.切除標本から子宮内膜腺構造を認めた.縫合した子宮筋層は子宮鏡下に内腔面から確認した.術後よりLEPを服用しているが,症状および病変の再発は認めていない.CSSの一部の症例を子宮腺筋症に類似した疾患と捉えて内分泌療法を主体とした薬物療法や外科的療法を施すことは有用であると考えられた.〔産婦の進歩73(3):271-276,2021(令和3年8月)〕