産婦人科の進歩
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原著
子宮頸癌に対するBevacizumab併用化学療法の検討 ―多施設後ろ向きケースコントロール研究―
横江 巧也北 正人角 玄一郎佛原 悠介久松 洋司中井 英勝松村 謙臣岡田 英孝
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2023 年 75 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

子宮頸癌に対する術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy;NAC)の症例と緩和的全身化学療法の症例で,TC(paclitaxel+carboplatin)療法とBevacizumab(Bev)の併用療法とBevによる維持療法の効果と安全性を比較検討する目的で,後ろ向き多施設共同研究を行った.関西医科大学附属病院および近畿大学医学部附属病院で,2016年から2019年までの間に子宮頸癌に対して化学療法が実施された患者のうち,他の化学療法や放射線療法の治療歴がない36例を対象とした.NACと腹式広汎子宮全摘術が実施された患者25例をNAC群,進行期子宮頸癌に対して化学療法を実施した患者11例を緩和的化学療法群とした.Bev併用はNAC群で8例(32%),緩和的化学療法群で4例(36.4%)であり,NAC群は4例,緩和的化学療法群では全例がBevによる維持療法に移行した.腫瘍減量効果,副反応等について,Bev併用の有無での比較・検討を行った.術前・術後補助化学療法の期間中にはBev併用による有害事象は認められなかったが,Bevの維持期間中に腸穿孔を含む有害事象を認め,治療の中断を要した.Bev併用療法群はベースライン時にリンパ節腫大を伴う症例を多く含んでいたが,術中出血量・手術時間・Down Stage率・病理学的な再発リスク因子はBevの有無で有意差を認めなかった.子宮頸癌に対するBev併用療法は,許容される安全性で実施可能であり,とくに長期間のBev維持期間は有害事象のマネジメントが重要であるが,NACや緩和的全身化学療法の有効性を向上させる可能性が示唆された.〔産婦の進歩75(1):1-9,2023(令和5年2月)〕

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© 2023 近畿産科婦人科学会
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