産婦人科の進歩
Online ISSN : 1347-6742
Print ISSN : 0370-8446
ISSN-L : 0370-8446
原著
精神疾患合併妊娠の妊娠中・産後増悪誘因ならびに周産期事象に与える影響
喜多 ともみ谷村 憲司施 裕徳内田 明子今福 仁美出口 雅士蓬莱 政寺井 義人
著者情報
ジャーナル 認証あり

2023 年 75 巻 1 号 p. 16-25

詳細
抄録

近年,精神疾患の患者数は増加しており,妊娠に合併することもまれではない.精神疾患合併妊娠では妊娠中・産後の原疾患の増悪や周産期事象への悪影響が問題となる.そこで,精神疾患合併妊娠における妊娠中・産後の原疾患増悪に関連する誘因,精神疾患が妊娠と児に与える影響を後方視的に検討した.2017年から2019年の間に当院で分娩した精神疾患合併妊娠を対象とし,妊娠中と産後それぞれで精神疾患増悪有り群と無し群に分けて臨床背景を比較し,さらに,精神科医が増悪誘因と考察した事象,妊娠・分娩帰結と児所見についても検討した.当該期間中の精神疾患合併妊娠は116症例であり,妊娠中の増悪は29症例(25.0%)に認められ,妊娠中の増悪有り群では妊娠中の増悪無し群に比し,向精神薬を中止した割合(31.0% vs 10.3%,p<0.05)と定期投薬有りの割合(82.8% vs 47.1%,p<0.005)が高かった.また,精神科医が妊娠中の増悪誘因と考察した事象は,向精神薬の中断・減量15症例(51.7%),パートナーとの不仲7症例(24.1%)などであった.一方,産後増悪は12症例(10.3%)に認められたが,産後の増悪有り群と産後の増悪無し群で臨床背景に差を認めなかった.精神科医が増悪誘因と考察した事象は向精神薬の中断2症例(16.7%),不明10症例(83.3%)であった.また,妊娠中増悪29症例中9症例(31.0%),産後増悪12症例中6症例(50.0%)で精神科病棟への入院を要した.また,早産27症例(23.3%),妊娠糖尿病12症例(10.3%),妊娠高血圧症候群8症例(6.9%)などの産科異常症を認めた.分娩帰結は,帝王切開術48症例(41.3%),緊急帝王切開術33症例(28.4%)であった.さらに,11症例(9.5%)で児に形態異常を認めた.精神疾患合併妊娠は,早産,先天性形態異常などのリスクがあることに加え,投薬中止・減量が増悪につながり,医療保護入院を要する場合もあるため産科,精神科,新生児科が密に連携する施設での管理が望ましい.〔産婦の進歩75(1):16-25,2023(令和5年2月)〕

著者関連情報
© 2023 近畿産科婦人科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top