抄録
日本の人口に占める外国人の割合が年々上昇し,妊婦の保健指導に関わる周産期医療従事者が外国人に対応する機会が増加することが予想される。本研究では,今後の保健指導に役立てることを目的に妊婦のラマダン時の断食の身体的影響について文献検討した。「ラマダン」「妊婦」「Ramadan」「Pregnancy」のキーワードを用い検索し除外基準を設定し選択された文献にハンドリサーチした文献を追加し21文献を分析対象にした。
結果からイスラム教の妊婦は一定の割合でラマダン月に断食し,その断食日数は様々であった。妊婦のラマダン月の断食の有無と出生時体重,低出生時体重児出産割合,早産割合,分娩週数の関連について検証した研究では,結果が混在していたが,統計学的有意差が認められなかった研究が多数であった。妊婦の糖代謝について断食妊婦は非断食妊婦と比較した一部の研究では血糖コントロール状態が良好だった結果が示されていた。本研究の文献検討のみで妊婦のラマダン月の断食の可否を結論づけることは困難であり,断食については妊婦と周産期医療従事者が身体面,心理面,社会面加味して慎重にデイスカッションしていくことが必要であると考えられた。妊婦がラマダン月の断食を希望した場合は断食日数を柔軟に考え,食生活パターンの変化への対応や日没後と夜明け前の食事について吟味し,断食による極端な栄養不足や栄養過多を予防する視点での対応が大切であると考えられた。