抄録
食品工業廃棄物の利・活用を目的として、豆腐おからやアルコール醸造時に発生したトウモロコシ残渣を用いて納豆菌発酵を行い、発酵物からナットウキナーゼの抽出を試みた。さらに豆腐おから、トウモロコシアルコール発酵残渣および市販納豆から抽出したナットウキナーゼSCR-NK、WDG-NKおよびNatto-NKのフィブリン分解活性を評価した。ナットウキナーゼ抽出条件を検討したところ、0.9 %食塩水375 ml、(NH4)2SO430 g、エタノール:食塩水の比は3:4の時、150 gの市販納豆(湿物)から抽出したナットウキナーゼの量は最も多く、0.108 gであった。乾燥基質重量に基づく計算したナットウキナーゼの収率を検討したところ、豆腐おからからのナットウキナーゼの収率(0.415 g/150 g)は市販の納豆からの収率(0.270 g/150 g)より格段に高かった。4時間のフィブリン加水分解実験をしたところ、発酵した豆腐おから及び発酵したトウモロコシアルコール発酵残渣から抽出したナットウキナーゼSCR-NKとWDG-NKの人工血栓分解面積はほぼ同様の49 mm2であり、この結果は市販納豆から抽出したナットウキナーゼの人工血栓分解面積と一致した。さらにナットウキナーゼ活性を評価したところ、SCR-NKの活性は1.3 FU/mlであり、Natto-NKの活性より高かった。本研究の結果から、豆腐おからはナットウキナーゼ生産の有望な資源となることがわかった。