農業施設
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40 巻, 1 号
第40巻第1号(通巻121号)
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 李 永玉, 鈴木 啓太郎, 大坪 研一, 神山 かおる, 院多本 華夫, 佐竹 隆顕
    2009 年40 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2023/12/14
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    本論文は、日本産の「夢十色」を原料とした生米麺(以後生麺とする)の冷蔵保存が同麺の吸熱特性(DSC)および冷蔵保存した生麺の茹で後(以後茹で麺とする)の動的粘弾性に与える影響について検討した。その結果、冷蔵保存に伴い、麺のつなぎとして用いた糊化生地の澱粉分子は再配列が生じ、約43℃と61℃で二つの吸熱ピークが見られた。一方、冷蔵していない生麺は生澱粉による一つの吸熱ピークしか見られなかった。また、冷蔵保存1日・2日・4日の茹で麺の貯蔵弾性率と損失弾性率は、冷蔵していない茹で麺に比べ大きい値を示し、生麺の冷蔵保存に伴い硬い食感の茹で麺が形成されると推察された。なお、冷蔵保存1日・2日・4日の生麺の間にはDSCによる吸熱エンタルピーの有意差が認められず、それらの茹で麺の貯蔵弾性率と損失弾性率も明らかな変化が認められなかった。
  • 劉 京, 李 源, 李 季, 張 振亜, 杉浦 則夫
    2009 年40 巻1 号 p. 7-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2023/12/14
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    本研究では、Uniform design に基づき、アンモニア水による稲藁の前処理研究を行った。12組の実験を行ったところ、酵素による藁の加水分解率はそれぞれ21.2%~74.2%の範囲であり、リグニンの除去率はそれぞれ12.2%~80.9%の範囲であった。また、23%のアンモニア水を用い、藁とアンモニア水の比率1:25(w/v)、温度170℃が最適な分解条件であった。回帰分析により、本実験の設定範囲において、酵素による藁の加水分解率を想定した各要素との相互関係について検討したところ、酵素による藁の加水分解率とアンモニア水濃度との相関が最も強いことが分かった。また、温度、アンモニア水の用量は糖の生成量と多少の関係を持つことが見られるものの、反応時間、稲藁の粉砕粒度とは関連性がないことがわかった。さらに、酵素による藁の加水分解率に対して、各要素との相乗関係では、明確な相互関係が認められなかった。また、本実験で導かれた最適条件を用いて稲藁のリグニン除去及び酵素による藁の加水分解率を検証したところ、53.7%のリグニンの除去率及び87.1%の糖化率が得られた。
  • -アンモニア除去及びTHM制御に関する検討-
    崔 京勛, 三好 久美子, 内海 真生, 張 振亜, 杉浦 則夫
    2009 年40 巻1 号 p. 19-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2023/12/14
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    天然ガス工業から排出される廃かん水中のアンモニウムイオン(以下、アンモニア)除去について電気化学的処理法を検討した。電気化学的反応において電極材料は反応の方向性、制御、効率に係る重要な役割を担う。電気化学的処理方法によるアンモニアの分解は、塩素発生に寄与している。過剰な塩素の発生によりトリハロメタン(以下、THM)が生成されることから、本研究ではアンモニアが分解されると同時にTHMの生成を制御することを目指し、電極電位配分を陰極側に大きくする条件を用いて、陰極材料の検討を行った。陰極材料にはステンレス、Pt、Cu、C/Cu、Cを用いた。その結果、これまで汎用的に用いられてきたステンレス電極はアンモニア処理の電流効率が23.3%と最も低く、THM生成速度は5.4×10-4mg/L/Cと最も速かった。一方、電流効率が最も高かったのはC/Cu電極の36.9%で、THM生成速度は4.3×10-4mg/L/Cと、ステンレス電極の半分以下に制御することができた。また、全窒素処理でもC/Cu電極が最も良好で、処理時間47分に対し、除去率は87.3%に達した。本研究の結果は、農業排水のアンモニア除去に有用な情報として提供できると考えられる。
  • 李 李, 鉏 暁艶, 車 海涛, 張 貴華, 楊 英男, 杉浦 則夫, 張 振亜
    2009 年40 巻1 号 p. 27-33
    発行日: 2009年
    公開日: 2023/12/14
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    食品工業廃棄物の利・活用を目的として、豆腐おからやアルコール醸造時に発生したトウモロコシ残渣を用いて納豆菌発酵を行い、発酵物からナットウキナーゼの抽出を試みた。さらに豆腐おから、トウモロコシアルコール発酵残渣および市販納豆から抽出したナットウキナーゼSCR-NK、WDG-NKおよびNatto-NKのフィブリン分解活性を評価した。ナットウキナーゼ抽出条件を検討したところ、0.9 %食塩水375 ml、(NH4)2SO430 g、エタノール:食塩水の比は3:4の時、150 gの市販納豆(湿物)から抽出したナットウキナーゼの量は最も多く、0.108 gであった。乾燥基質重量に基づく計算したナットウキナーゼの収率を検討したところ、豆腐おからからのナットウキナーゼの収率(0.415 g/150 g)は市販の納豆からの収率(0.270 g/150 g)より格段に高かった。4時間のフィブリン加水分解実験をしたところ、発酵した豆腐おから及び発酵したトウモロコシアルコール発酵残渣から抽出したナットウキナーゼSCR-NKとWDG-NKの人工血栓分解面積はほぼ同様の49 mm2であり、この結果は市販納豆から抽出したナットウキナーゼの人工血栓分解面積と一致した。さらにナットウキナーゼ活性を評価したところ、SCR-NKの活性は1.3 FU/mlであり、Natto-NKの活性より高かった。本研究の結果から、豆腐おからはナットウキナーゼ生産の有望な資源となることがわかった。
  • 池口 厚男, 奥島 里美
    2009 年40 巻1 号 p. 35-46
    発行日: 2009年
    公開日: 2023/12/14
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    鳥インフルエンザを始めとした人畜共通感染症や口蹄疫などの家畜の疾病は畜産業のみならず地域や国に甚大な被害を及ぼす。これらに対する防疫の概念としてコンパートメンタリゼーションが提唱されているが、我が国では無窓鶏舎のバイオセキュリティーレベルの適応に関してデータや指針はない。一方、病原体の伝播の形態の一つにエアロゾルがあげられ、鶏舎間での伝播や拡散性状を把握する事が非常に重要である。そこで本研究はコンパートメンタリゼーション摘要性の検討のため、汚染質の発生位置、鶏舎間距離による汚染質の鶏舎間伝播や舎外への拡散性状を明らかにすることを目的とした。対象とする鶏舎は横断換気方式の2階立て無窓平飼ブロイラー鶏舎で、風上と風下に位置する2棟の1/20の模型を用い、定常、非等温条件で風洞実験を実施した。比重が空気と同程度のエチレンガスをパッシブスカラーである病原体を含む汚染空気として用いた。  発生量に対する伝播量は10-2のオーダーで、発生源が風上側の建物、かつ1階で、鶏舎間距離が棟高さの4倍である場合が最も伝播量は低く、風下側の建物に伝播しなかった。風下側から発生した場合、汚染空気は風上側の建物にも伝播し、その量は風上側から発生する場合よりも多かった。舎外への拡散量は建物間で多く、風上の建物から風下側に棟高さの6倍の距離を離れると、どの条件でもほぼ同程度の拡散量となった。
  • 王 蕊, 山口 智治, 趙 淑梅, 星 典宏
    2009 年40 巻1 号 p. 47-55
    発行日: 2009年
    公開日: 2023/12/14
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    パッドアンドファン冷房温室の冷却効果について多くの研究がなされ、その効果が確認されている。しかしながら、実際にパッドアンドファン冷房システムを利用した大型温室の空気温度分布、気流速度分布など空気分布特性についての実測・検討例は少ない。そこで本研究では、パプリカを栽培する大型パッドアンドファン冷房温室において室内外気象条件、換気量、室内温度分布、気流速分布などの観測を行い、冷房効果および室内空気分布について検討を行った。  実験期間の晴天日において、パッド冷房実施中の温室内平均気温は28℃以下であり、また実際のパッド冷却効率は0.7-0.8、平均値は0.75であり、パッド冷房効果は比較的良好なものと考えられた。温室内気流速度分布は排気ファンの運転条件によって変化するが、室内気流速度は最大でも1.0 m/sと緩慢であった。温室内には、パッドからファンまでの水平方向および床面から植物群落頂部までの垂直方向共に温度上昇があり、それぞれ、2~5℃、0.8~5℃であった。温室の積算顕熱・潜熱比は外部天候条件に影響され、晴天日において0.6であり、曇天日ではこれより小さかった。
  • 中野 和弘, 相田 貴子, 楊 迪桂, 大橋 慎太郎, 陳 青雲
    2009 年40 巻1 号 p. 57-65
    発行日: 2009年
    公開日: 2023/12/14
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    日本のネットメロンの価格は、その品質により大きく変動する。ネットメロン栽培時のハウス内土壌水分管理は篤農家の熟練技術や経験が必要とされる難しい作業であり、特に砂質土壌の場合はさらに困難となる。  本研究では、篤農家から抽出したノウハウを用いてファジィ制御方式の灌水システムを構築し、ON-OFF制御や篤農家の手動灌水(慣行区)と比較した。実験は、砂質土壌でのハウス栽培について行われた。メロン栽培の生育ステージごとに土壌水分制御の目標範囲を設定した。ファジイ制御区では、日射量、土壌水分、ハウス内温度および大気圧などの環境データに基づくファジィルールにより土壌水分の変化量を予測した。ON-OFF制御区では、土壌水分が目標範囲より下回っているかどうかを灌水の指標とした。慣行区の総灌水量と比較した結果、ファジィ制御区で48.7%、ON-OFF制御区で16.5%という節水率となった。果実糖度と外観等級については、両制御区とも慣行区と同等の結果が得られた。以上により、本研究で開発されたファジィ制御方式では、灌水作業時間の短縮や節水効果などが認められ、ネットメロン栽培に非常に有効であることが示された。
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