日本化粧品技術者会誌
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シクロデキストリン包接錯体による整髪性能の向上
浅田 拓二井口 顕策上田 卓典北岸 宏亮加納 航治
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2014 年 48 巻 3 号 p. 177-183

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抄録

本研究においては,種々のシクロデキストリン (CD) と整髪剤で汎用されるセットポリマーの組み合わせについて構造解析を行い,CDによる包接錯体形成により新たな整髪性能が発現するかについて検討を行った。1H NMR測定の結果,γ-CDはポリビニルピロリドン (PVP) と相互作用していることが確認され,さらに2次元1H NMRの応用測定であるDOSYおよびNOE測定を行った結果,γ-CDはPVPと錯形成していることが明らかとなった。また,分子力学法を用いた分子構造解析により,この構造体はγ-CDがPVP主鎖を包接した擬ロタキサンを形成していることが示唆された。次に種々のCDとセットポリマーの組み合わせにおいて整髪性能へ及ぼす影響について検討を行った。カールリテンション測定の結果,γ-CDとPVPおよびピロリドン骨格を有するセットポリマーの組み合わせにおいて,特異的にセット保持力が向上することが明らかとなった。さらにγ-CDがピロリドン系ポリマーのセット力 (硬さ) へ及ぼす影響について検討を行った結果,毛束の硬さには影響を及ぼさないことを確認した。つまり,γ-CDはピロリドン系ポリマーに対して毛束の柔軟性を保持したまま,セット保持力のみを向上させることが判明した。

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© 2014 日本化粧品技術者会
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