日本化粧品技術者会誌
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天然の無機系ナノ粒子
─火山灰中のナノ粒子とその安全性─
黒田 章裕杉林 堅次藤堂 浩明伊藤 公紀雨宮 隆安部 隆宮城 磯治
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2017 年 51 巻 4 号 p. 317-325

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抄録

無機系ナノ粒子の生体に対する影響が危惧されて以来,数多くの論文が発表されてきたが,安全なのか,そうでないのかの結論に対しては,いずれも決め手に欠け,結論が見えない状態が継続している。われわれは,無機系ナノ粒子のヒトに対する長期曝露試験や世代をまたいだ安全性の評価結果が存在していないことがこの問題の原因の1つであると考えている。現在,規制議論の中では無機系ナノ粒子は人工起源のものしか存在が想定されていないが,火山灰中には無機系ナノ粒子が含まれている。われわれはいくつかの火山の火山灰中の無機系ナノ粒子の存在を確認し,火山灰の水分散液から無機系ナノ粒子が容易に観察できること,その形態が化粧品原料の無機系ナノ粒子粉末にしばしばみられるような高次凝集体を形成していないことを見出した。さらに火山灰中の無機系ナノ粒子を火山灰から単離,定量する方法を開発した。特に,大正時代から長期間連続的に噴火と近隣への降灰が継続し,かつ地域住民に対する健康調査が長期にわたり継続的に実施されている桜島に注目して検討を行った。桜島は,無機系ナノ粒子を年50~500t程度環境に放出していると推定されるが,健康調査の結果は,おおむね急性毒性はあるものの,慢性毒性は増加しておらず,腫瘍などもみられないという報告になっている。

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© 2017 日本化粧品技術者会
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