2019 年 53 巻 1 号 p. 16-23
一般に,化粧品の感触評価には官能評価が用いられるが,評価者の技量や環境などの種々因子に依存して評価結果が左右されやすい。そこで,感触評価の精度,再現性向上を図るべく,物理指標を用いたさまざまな客観的評価方法の開発が検討されてきた。粉体化粧品における「滑らかさ」や「しっとり感」といった感触特性は,重要な機能の1つであるが,スキンケア化粧品と比較すると確立された評価方法が非常に少ない。本研究では,従来から医薬・食品分野において,粉体の流動性評価に利用される粉体層直接せん断試験法に着目し,化粧品粉体原料,およびパウダーファンデーションへの適用を検討した。その結果,本試験法により得られた内部摩擦係数μi,およびせん断付着応力τcが,官能評価で得られた「滑らかさ」,および「しっとり感」と,それぞれ良く相関することを見出した。本評価方法は,単一の原料粉体だけでなく,固形ファンデーションのような成型体の評価にも利用でき,その適用範囲は広く非常に有用性が高いと考えられる。また,組成同一で成型方法(乾式成型,湿式成型)のみ異なるパウダーファンデーションに関しても,その微妙な感触の違いを識別できることが示唆された。