2019 年 53 巻 2 号 p. 91-98
口紅のツヤは,最も重要視される品質特徴の1つであるが,いまだに定量評価技術は確立されていない。本研究は,口紅のツヤの定量評価技術確立を目的とし,質感表現「パール感」「グロス感」がもたらす画像特徴に着目したツヤ評価技術の開発を行った。まず,光沢知覚に関する先行研究で用いられているSkewnessとツヤの相関を評価したところ,グロス感の強い口紅のツヤとSkewnessの相関がある一方で(r=0.65),パール感の強い口紅のツヤはSkewnessとの相関が弱いことが示された(r=0.21)。そこでパール感口紅のツヤとの相関を期待した新指標「RMSコントラスト」を導入した,新たなツヤ評価技術を検討した。本技術の妥当性を検証するため,パール感,グロス感およびマット方向に質感を強調した口紅を用い,SkewnessおよびRMSコントラストとツヤの関係を評価した。評価の結果,SkewnessおよびRMSコントラストはパール感,グロス感口紅のツヤの評価指標として有効であり,これら2つの指標を用いた重回帰式によって相関係数r=0.82の精度でツヤを推定できることが示された。