2021 年 55 巻 1 号 p. 36-44
「感性」の可視化により,ユーザーが潜在的に重要と捉える因子を把握し,物理計測値から感性を予測することを目指した。まず,ユーザーの心理構造をモデル化した結果,ふきとり化粧水の使用感触,特にふきとり動作時の触感に由来する2因子「肌摩擦感」および「ふきとれた実感」を潜在的に重要と捉えていることが示唆された。次に,ふきとり動作時の触感について,摩擦力に着目した物理量との関係を検討した。動摩擦係数の観点では,2因子を個別に評価できないのに対し,触感形成に作用する振動成分の特徴量との関係を解析したところ,特定の周波数領域のパワースペクトル密度から2因子を独立して予測できることが分かった。これを予測指標として用いることで,従来は成し得なかった,ふきとり時の触感が優れたふきとり化粧水の感性評価を可能とした。