日本化粧品技術者会誌
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原著
敏感肌に対するリポポリサッカライドの有効性
─バリア機能の改善─
河内 千恵竹馬 真理子濱田 和人池本 毅筒井 翔子稲川 裕之杣源 一郎
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2021 年 55 巻 4 号 p. 338-345

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抄録

皮膚や環境中のマイクロバイオームおよびその成分は,皮膚の恒常性維持に寄与している。われわれは,グラム陰性細菌成分であるリポポリサッカライド(LPS)の継続塗布が,肌の敏感性,水分保持力に及ぼす効果について人での検証を行った。さらに効果のメカニズム解析のため,ヒトケラチノサイト細胞株HaCaTを使い,LPSの刺激で変化する遺伝子を解析した。11人の敏感肌を自覚する被験者による乳酸刺激試験により,パントエア・バガンス由来のLPS(LPSpv)を配合したローションの使用が,被験者の肌の刺激感覚を和らげることが示された。さらに被験者では,角層水分量が増加し,経皮水分蒸散量が低下することが示された。HaCaTを用いたin vitroの試験では,1 μg/mLのLPSpvの刺激により,細胞増殖促進効果が見られた。またRT-qPCRによって,HaCaTにおいて,100 ng/mLのLPSpvの刺激により,バリア機能に係るFilaggrinとFibronectinの遺伝子発現が有意に増加し,タイトジャンクションに係るClaudin 1の遺伝子発現が有意に増加することが示された。これらの結果は,LPSpvが表皮のバリア機能を高め,敏感肌の改善に寄与しうることを示唆している。

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