日本化粧品技術者会誌
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原著
角栓形成に対するタンパクのニトロ化の関与
安倉(恒原) 由佳齊藤 奈緒美森田 美穂
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2023 年 57 巻 2 号 p. 122-127

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抄録

毛孔に生じる角栓は,タンパクを主成分とする固形物で,その形成予防は難しかった。角栓は,ケラチン17(K17)を特徴的に含有し,K17の生成に関わるインターフェロンγ(IFN-γ)の角栓形成への関与が窺われた。一方,IFN-γは一酸化窒素(NO)の生成に関与すること,またNOを介するチロシンのニトロ化はタンパクの凝集を引き起こす例があることから,タンパクが固形物となる機構にこれらが寄与している可能性が考えられた。そこで本研究では,角栓形成に対する IFN-γやタンパクニトロ化の関与の有無を明らかにするため,IFN-γ量の角栓数への関与,角栓タンパク成分の解析,ニトロ化がタンパクの分子サイズに与える影響について調査した。その結果,IFN-γ が多い人は角栓数が多く,角栓中にはニトロチロシンが存在することが明らかとなった。また,ニトロ化によりタンパクの分子サイズは増大し,培養角化細胞においては,IFN-γ が NO ドナーと同様にニトロチロシン生成を促進することがわかった。本研究により,毛孔内に固形物を生じる原因として IFN-γ による NO 生成を介するタンパクのニトロ化が示唆され,タンパクニトロ化やそれによる凝集の阻害が新たな角栓形成予防策として提案された。

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