カラートリートメントは,髪をケアしながら髪を色付けることができる染毛料である。2剤を混ぜて使用するヘアカラーと異なり,一度の施術で髪を明るくしたり,しっかり髪色を変えたりすることはできないが,その簡便さや安心感から,近年ではヘアカラーに代わる,あるいはその効果を補助するアイテムとして注目されている。本稿では,一般的なカラートリートメントに用いられている染料とその特徴,着色機構と製剤特長について紹介する。あわせて黒色メラニンの前駆体であるジヒドロキシインドールを着色料に用いた染毛料の技術開発とその製剤特長について紹介する。
毛孔に生じる角栓は,タンパクを主成分とする固形物で,その形成予防は難しかった。角栓は,ケラチン17(K17)を特徴的に含有し,K17の生成に関わるインターフェロンγ(IFN-γ)の角栓形成への関与が窺われた。一方,IFN-γは一酸化窒素(NO)の生成に関与すること,またNOを介するチロシンのニトロ化はタンパクの凝集を引き起こす例があることから,タンパクが固形物となる機構にこれらが寄与している可能性が考えられた。そこで本研究では,角栓形成に対する IFN-γやタンパクニトロ化の関与の有無を明らかにするため,IFN-γ量の角栓数への関与,角栓タンパク成分の解析,ニトロ化がタンパクの分子サイズに与える影響について調査した。その結果,IFN-γ が多い人は角栓数が多く,角栓中にはニトロチロシンが存在することが明らかとなった。また,ニトロ化によりタンパクの分子サイズは増大し,培養角化細胞においては,IFN-γ が NO ドナーと同様にニトロチロシン生成を促進することがわかった。本研究により,毛孔内に固形物を生じる原因として IFN-γ による NO 生成を介するタンパクのニトロ化が示唆され,タンパクニトロ化やそれによる凝集の阻害が新たな角栓形成予防策として提案された。
COVID-19の普及や行政の啓発活動により衛生意識が高まり,消費者に手洗いの重要性が浸透しつつある。しかし生活者調査の結果,手洗い後の抗菌・抗ウイルス性の持続性について疑問に感じていることが確認された。そこで本研究では手洗い後の汚染リスクを想定したモデル実験系を設定し,各種界面活性剤の抗菌・抗ウイルス効果の持続性を測定した。表面上の生菌数および触る頻度が高いドアノブに触れる行動を想定し,洗浄したモデル皮膚に20分ごとに菌液またはウイルス液を塗布し,残存する菌数・ウイルス数を測定することで抗菌・抗ウイルス効果の持続性を測定した。その結果,脂肪酸塩の効果持続性が他の界面活性剤に比べて高く,脂肪酸鎖長やEO付加モル数,対イオンの違いよりも構造の違いによる影響が大きいことが示唆された。さらに界面活性剤自体のポテンシャル試験とモデル皮膚への活性剤残存量を測定した結果,効果持続性と同様の傾向がみられたため,これらが効果持続性に関与する因子であると推察した。
カチオン界面活性剤はヘアトリートメントを始めとするさまざまなヘアケア製品に配合されている。これは,カチオン界面活性剤が毛髪表面に吸着することで毛髪を滑らかな感触にする効果を示すためであり,これまでにカチオン界面活性剤の毛髪表面への吸着挙動や毛髪への効果については多くの研究が報告されている。一方で,カチオン界面活性剤は毛髪内部へ浸透することもしられているが,このときの毛髪への効果について調べた研究は少ない。そこでわれわれはカチオン界面活性剤であるアルキルトリメチルアンモニウムクロリド(C8-18)を毛髪に一定時間処理し,毛髪内に浸透させ,そのときの毛髪への効果を調査した。検討の結果,アルキルトリメチルアンモニウムクロリドには毛髪を太くする効果があることがわかり,その中でもアルキル鎖長が12のドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DTAC)は短い処理時間で毛髪を太くする効果が高いことを見出した。さらに,DTACを処理した毛髪では,毛髪が膨らんだことに起因すると考えられる曲げ剛性の増加や,ダメージにより発生する毛髪の形状の乱れを補修する効果も認められ,今後のヘアケア製品にDTACの活用が期待された。
化粧品原料における糖アルコールはスキンケア・ヘアケア向けの保湿剤として認識されている。糖アルコールの中でもソルビトール,キシリトールが多く利用されているが,分子構造が類似の多価アルコール(例:グリセリン)に比べると,圧倒的に利用されていない現状である。本研究では単糖糖アルコールに焦点を当て,リーブオン化粧品で重要視されるテクスチャーと保湿性について検証を実施した。各単糖糖アルコールもしくは比較対象としてグリセリンを配合した化粧水を用いて,まずはテクスチャーを官能試験と機器測定により評価した。テクスチャーの中でも乾燥直前のブレーキ感,乾燥後のべたつきのなさ,さっぱり感,しっとり感などが,グリセリンと異なり,また単糖糖アルコール間でも大きく異なることが示された。次に角層水分量を測定し,単糖糖アルコール間でも保湿力に違いがあることが確認された。分子構造が類似の成分であるものの,テクスチャーや保湿性に違いがあることが示された点は興味深い。以上より,リーブオン化粧品の商品コンセプトに応じて,単糖糖アルコールを使い分けることで商品設計に大きく貢献できる可能性が期待された。
皮膚に有用な美容成分の浸透を電気刺激で促進させる手法は種々しられている。われわれは,美容成分の角層への浸透を高める電気浸透波形6種類の角層への浸透量の違いについてアニオン性を有するリン酸アスコルビルMgとカチオン性傾向のナイアシンアミドの2種類の美容成分を用いて比較検討した。その結果,このたび開発したエレクトロポレーション要素と高周波要素を併せもつ複合浸透波形がきわめて浸透量が多いことが示された。(1)イオントフォレーシスはコントロールに比べ浸透量が多い傾向であり従来の報告と一致するものであったが有意差は見られなかった。また高周波(RF)もコントロールに比べ浸透量が多い傾向ではあったもののリン酸アスコルビルMgでは有意差は見られなかった。(2)複合浸透波形と同一の出力電力である矩形波と比較したところ,複合浸透波形は矩形波に比べ有意に浸透量が多いことから複数の要素を併せもつ複合浸透波形が角層への浸透を顕著に促進することが明らかになった。