抄録
肉眼では美しく仕上がったと思われるメークアップした顔をフラッシュ撮影すると, 顔だけが青白く不自然に写るという現象が多発するようになった。この現象は, 本質的には写真工業の技術の問題であるが, ユーザーは使用したファンデーションに原因があると考える。我々の調査では50%以上のユーザーがこの現象を経験しており, 化粧品業界にとって大きな問題である。
この現象はファンデーションを厚塗りし, 低出力のフラッシュを有したコンパクトカメラで撮影したときに最も重度に発生する。我々はメークアップした顔の分光測定を行い, カラーフィルムの色再現性特性を反映させて解析することによりこの現象の発生メカニズムを解明した。
更にこの結果に基づいて, 二酸化チタンと酸化鉄とを焼結させたシュードブロッカイトFe2TiO5を開発した。このシュードブロッカイトを配合することにより, どのような照明条件下であっても, 写真においてメークアップした顔だけが青白く写る現象が発生しない新しいファンデーションが得られた。