日本化粧品技術者会誌
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初期老化の兆候としての表皮基底膜ダメージと基底膜ケアのキー物質としてのラミニン5
天野 聡
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2001 年 35 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

皮膚は, 主として表皮と真皮より構成されるが, その境界部には基底膜が存在する。この表皮基底膜は, アンカリング複合体を形成して表皮と真皮を強く繋ぎ止めている。表皮基底膜は, さらに, 表皮細胞の分化増殖を制御し, 表皮の極性の維持にも寄与している。この表皮基底膜は, 加齢とともに多重化, 断裂という構造変化が起こる。特に, 顔面皮膚では, 「お肌の曲がり角」といわれる20代後半から30代前半に急激に構造変化が起こっている。この変化は, 皮溝皮丘の加齢に伴う変化とほぼ一致し, 老化の初期変化, 「初期老化」と定義できる。これが将来のしわ・たるみなどの老徴の出現を促進させる要因と考えられる。したがって, 基底膜を健康に保つことは老化の進行を遅らせるためのスキンケアとして重要な機軸であるといえる。ラミニン5は, アンカリング複合体を構成する糖蛋白質で, 表皮基底膜に存在し, 表皮が真皮へ接着するために重要な働きをしている。精製ラミニン5は, 三次元培養皮膚および表皮シート移植試験において基底膜形成促進活性をもつ。さらに, ラミニン5産生促進物質もまた, ラミニン5と同様に基底膜形成促進作用を示す。したがって, ラミニン5, ラミニン5産生促進物質は「基底膜ケア」のキー物質である。

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