2004 年 38 巻 3 号 p. 211-219
カチオン性高分子と界面活性剤を含むシャンプーを希釈すると, ある特定の濃度領域で液-液相分離現象が観察される。粘稠な下層はカチオン性高分子とアニオン性/両性混合界面活性剤によって形成される水に不溶の複合体の相であり, 一般に, この相分離現象をコアセルベーションと呼び, 下層をコアセルベートと称している。このコアセルベートがシャンプーの使用感に強く影響を与えることは経験上知られているものの, 詳細については, 不明な点を多く残している。我々はコアセルベートがシャンプーの使用感へ及ぼす影響を調べるため, カチオン化度や主鎖骨格の異なるカチオン性高分子を配合したシャンプーを調製し, 生成するコアセルベートの性質 (生成領域, 生成量, レオロジー特性, 毛髪への付着) とシャンプーの使用感について検討した。その結果, シャンプー希釈過程におけるコアセルベートの生成領域や生成量によって, シャンプーすすぎ時の使用感が大きく変化することを見出した。またカチオン化度や主鎖骨格を変化させることによって, コアセルベートのレオロジー特性および毛髪への付着をコントロールすることができ, シャンプーの使用感もまた変化させることができることが示唆された。