抄録
高度自動化システムの導入(オートメーション)による制御を早くから取り入れてきた原子力プラントや航空機など大規模システムにおいては,高効率,高精度,高い状況適応性がもたらされた.一方では,高度化された機械を人間が操作する場合,人間と機械の相互干渉の複雑さが様々な予期せぬ問題を引き起こしている.例えば,人間はユーザインタフェースを介して機械を操作しているため,機械の実際のモードと人間が予測するモードが異なる可能性がある.その結果人間と機械はうまく調和しなくなる.この現象はオートメーションサプライズと呼ばれ,重大なヒューマンエラーが起こる引き金ともなり得る.これらの問題は主に人間と機械の間における情報の不完全さによるところが大きい.したがって,人間機械系において人間と機械の境界面に存在するユーザインタフェースを設計することが重要な問題となっている.本論文では,離散事象システム理論に基づき人間機械系を解析し,オートメーションサプライズを検証する手法を提案する.さらに,この手法を実装するための検証支援ソフトウェアを開発し,その概要の説明を行う.まず人間機械系を離散事象システム(オートマトン)としてモデル化し,オートメーションサプライズをmode confusion, blocking state, refusal stateに分類する.それぞれの現象を数学的に定義し,マシンモデルとユーザモデルが並行に動作する合成モデルを導入する.合成モデルを用いてオートメーションサプライズを検証するためのアルゴリズムを実装する.最後に,検証支援ソフトウェアで作成した例題を用いて提案するアルゴリズムの有用性を示す.