2025 年 32 巻 9 号 p. 57-66
活動中の筋群から遠位における四肢(手のひらや足裏など)に冷温物質を当てることによる非侵襲的なセット間の回復戦略があるが、その潜在的なエルゴジェニック(運動能力向上)効果を探る研究が始まっている。このような戦略は、中枢神経系への刺激を増大させて、活動筋の興奮と運動単位の動員を増強することにより、レジスタンストレーニング(RT)のパフォーマンスを一時的に向上させ、その結果、発揮筋力を増大させ、疲労困憊までのレップ数の増加をもたらす可能性があると示唆されていた。さらに、遠位部の冷却などの末梢刺激は、RT中の苦痛感を一時的に軽減し、エクササイズへの耐性を高め、より多くのトレーニング量を完遂できる可能性がある。RT中のセット間における遠位部冷却に増強効果があることを示唆するエビデンスはいくつかあるが、特定の方法論的な問題や縦断的研究の不足、相反する知見などがあるため、それらの研究の有効性には疑問も生じている。したがって、本レビューの目的は、セット間の手のひらや足裏の冷却がRTのパフォーマンスの結果に及ぼす影響に関して、既存のエビデンスを評価することである。