脳卒中の外科
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原  著
当院での中大脳動脈瘤に対するclosure lineを意識したneck clippingの現状
菅原 貴志藤井 照子田中 洋次前原 健寿
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2022 年 50 巻 3 号 p. 177-184

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抄録

中大脳動脈瘤(middle cerebral artery aneurysm:MCAN)では,combination clip techniquesによるclosure lineでの閉鎖が有用であり理想的だが困難なことがある.MCAN clippingの戦略,方法を提示し,クリップの種類・方法選択の現状を報告する.

筆頭著者が行ったMCAN連続31病変に関し,年齢,性別,破裂/未破裂,最大径,合併症を調査した.手術記録,ビデオを後方視的に確認し,術中破裂の有無,クリップの数,クリップの形状,closure line閉鎖の有無を調査し,年齢,性別,破裂/未破裂,動脈瘤最大径との関係も検討した.

平均63.5(34-80)歳,男性5例(16.1%),破裂3例(9.7%),平均最大径5.1mm(2-10.2),術中破裂0例(0%)であった.2例(6.5%)で慢性硬膜下血腫を認めた.クリップ数は1本 13例(41.9%),2本 17例(54.8%),3本 1例(3.2%)で,24例(77.4%)でclosure lineの閉鎖が行えた.

クリップ 2本以上使用例は1本使用例と比べて(5.2 vs 4.3mm,p=0.037),窓付クリップ使用例は未使用例と比べて(6.6 vs 4.8mm,p=0.034),それぞれ動脈瘤の最大径が有意に大きかった.closure lineで閉鎖の可否に年齢,性別,破裂/未破裂,動脈瘤の最大径にそれぞれ有意差はなかった.closure lineで閉鎖できなかった理由は,動脈硬化 2例,M2のkink 2例,クリップ挿入方向に制限 2例,小さな動脈瘤 1例であった.

MCANのclippingでは大きな動脈瘤で複数のクリップと窓付クリップを使用し,closure lineでの閉鎖の可否に動脈瘤サイズは関与せず,77.4%でclosure lineでの閉鎖ができていた.動脈硬化やクリップ挿入方向の制限などでclosure lineの閉鎖困難であったが,症例数が少なく,さらなる症例の蓄積による検討が必要である.

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© 2022 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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