2023 年 51 巻 1 号 p. 20-27
急性期脳梗塞に対する血栓回収術は発症6時間から24時間以内の有効性が報告され,患者選択が重要となった.中大脳動脈急性閉塞に対して側副血行を利用した3D撮影が治療適応の指標になり得るかを検討したので報告する.
対象は中大脳動脈急性閉塞に対して血栓回収を行った37例で,2015年1月から2017年12月の従来群(発症8時間以内,DWI-ASPECTS≧5)26例と,2018年1月から12月の3D撮影群(発症16時間以内,DWI-ASPECTS≧5かつ3D撮影でDWIの高信号域と一致しない良好な側副血行を有する閉塞血管の灌流領域がある)11例.3D撮影群では血栓回収前に33%に希釈した造影剤を18秒delay,5秒間の3D撮影を内頚動脈から行ってMIP画像を作成した.再開通には両群ともにステントリトリーバーを使用した.年齢,性別,来院時のNIHSS,DWI-ASPECTS,発症から穿刺までの時間,手技時間,TICIスコア,発症30日後のmRS,合併症について両群で比較した.
全項目で両群間に有意差はなかったが,最終健常確認時刻から穿刺までの時間の中央値は3D撮影群で延長し(従来群210分,3D撮影群380分),良好な転帰(mRS 0-2)の割合は従来群54%,3D撮影群73%であった.
中大脳動脈急性閉塞に対する側副血行を利用した血栓回収前3D撮影は,血栓回収術の対象拡大に対応する治療適応の指標となることが示唆される.