脳卒中の外科
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症  例
前脈絡叢動脈の起始部および灌流域の破格に合併した破裂脳動脈瘤の1例
斉藤 克也野川 博嗣柴尾 俊輔冨田 栄幸
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2023 年 51 巻 2 号 p. 161-166

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抄録

前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery:AchoA)の起始部や灌流域に関する破格には複数のバリエーションがある.今回われわれはAchoAの起始部および灌流域の両者の破格をもち,その近傍に破裂動脈瘤が発生したというまれな症例を経験したため報告する.

症例は,80歳女性.意識障害で発症し頭部CTで広範なくも膜下出血を認めた.CT angiographyでは内頚動脈-後交通動脈(posterior communicating artery:Pcom)分岐部に3mmの膨らみを認める以外は出血源として明らかな所見はなかった.脳血管撮影ではPcom近位部に3mmの小瘤を認めるとともに,Pcomと共通幹を形成する形で内頚動脈から起始する血管を認めた.画像解析すると,Pcomと共通幹を形成している血管はAchoAで,通常の灌流域に加えて後大脳動脈のanterior temporal branchに相当する領域も灌流しているものであった.治療はバルーン併用コイル塞栓術によってPcomとAchoAの両者を温存して動脈瘤を塞栓した.本例のように起始部と灌流域の両者の破格に合併した破裂動脈瘤の報告はきわめてまれである.われわれがAchoAに付随する脳血管障害を治療する際には合併症回避のため,破格を認識しておくことが大切である.AchoAは発生学的にPcomやPCAと密接な関係にあるため,あわせて読影することが肝要である.

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© 2023 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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