2023 年 51 巻 4 号 p. 292-297
前大脳動脈近位部(A1)動脈瘤はまれな疾患で全脳動脈瘤の1-2%の頻度と報告され,多くは穿通枝分岐部に発生するため治療の難易度は高い.今回,当院で施行した10例のA1動脈瘤について後方視的に検討を行い,臨床的特徴とさまざまな形態による治療戦略に関して報告する.当院で治療を行った脳動脈瘤症例1,520例を対象とし,A1動脈瘤は10例(0.6%)であった.9例が未破裂,1例が破裂脳動脈瘤で,発生位置はA1上のdistal 6例,proximal 3例,middle 1例であった.発生部位はmedial LSA分岐部 3例,orbito-frontal artery分岐部 2例,accessory MCA分岐部 1例であった.治療はclipping 4例,coil塞栓 4例,wrapping 1例で,巨大血栓化動脈瘤に対してはSTA-STA-A3 bypass+trappingを行った.全例で穿通枝障害含め合併症はなかった.A1動脈瘤に対しては,穿通枝温存のためにも直視下でのclippingが理想的と考えるが,近年では血管内治療の報告も散見される.巨大血栓化動脈瘤に関しては瘤の根治性を高めるためにbypassを駆使した治療戦略も求められる.