脳卒中の外科
Online ISSN : 1880-4683
Print ISSN : 0914-5508
ISSN-L : 0914-5508
原  著
神経外視鏡による開頭クリッピング術の利点と課題
前田 拓真大井川 秀聡小野寺 康暉佐藤 大樹鈴木 海馬栗田 浩樹
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 51 巻 5 号 p. 397-404

詳細
抄録

神経外視鏡手術が脳神経外科臨床にも導入され,その有用性が報告されている.当科では2021年から脳血管外科手術を神経外視鏡化するプロジェクトに取り組み,2022年は大部分の手術を神経外視鏡下で行っている.今回,顕微鏡手術からの移行期における脳動脈瘤手術の治療成績を検討した.

対象は2021年1月から2022年8月までに当院で開頭手術を行った未破裂脳動脈瘤連続134例のうち,開頭クリッピング術を行った132例とした.神経外視鏡と顕微鏡の両群間で患者背景,セットアップ時間,手術時間,周術期合併症の有無,退院時予後について後方視的に検討を行った.

神経外視鏡は75例(55.1%)で選択された.両群間で年齢・性別などの患者背景に有意差を認めなかった.両群で専攻医の執刀率が最も高く(65.3% vs. 59.0%),セットアップ時間(63分 vs. 62分),手術時間(295分 vs. 304分),周術期合併症(5.3% vs. 3.3%),退院時予後良好(97.3% vs. 95.1%)は両群間で有意差を認めなかった.

アンケート調査では,画質(78.9%),明るさ(84.2%),操作性(73.7%),教育(57.9%)などにおいて,神経外視鏡がより高い評価を得た.一方で,助手の操作性については課題も明らかとなった.

神経外視鏡は高画質,デジタルズームによる従来以上の強拡大,head-up surgeryによる疲労軽減,接眼レンズをもたない小型なカメラで視軸の自由度が大きいなどのメリットを有する.神経外視鏡は開頭クリッピング術においても有用であり,trainer,traineeの経験がともに少ない初期経験においても,許容可能な治療成績であった.

著者関連情報
© 2023 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top