2024 年 52 巻 2 号 p. 94-100
血管内手術時代における中大脳動脈瘤clipping術には,低侵襲手術が求められる.sphenoid ridge keyholeによるclipping術もその1つである.われわれは,整容的な観点から皮膚切開をもみあげ内に行うsideburn skin incisionを行い,側頭筋の筋腹切開なしで頭蓋骨を露出した.蝶形骨縁外側を頭蓋骨上から視認するのは困難である.解剖学的観点から,蝶形骨縁を頭蓋骨上から同定する方法として,蝶鱗縫合による骨隆起の前方に存在する骨陥凹であるsphenoid depressionを触診で同定する方法を提示した.これによって正確にsphenoid ridge keyhole開頭術を行い硬膜切開すると,シルビウス裂を中心とした術野が得られる.34例の未破裂中大脳動脈瘤をclippingした結果は,全例でneck clippingが施行され,平均術後在院日数は3日であった.開頭部の平均最大径は29mmであった.術後認知機能を含む神経学的障害はなく,術前のうつ状態は術後3カ月で有意に改善した.sphenoid depressionに注目したsphenoid ridge keyhole clipping術は,血管内治療時代おいても有用な低侵襲手術と考えられる.