2024 年 52 巻 4 号 p. 258-264
クラゾセンタンはくも膜下出血後のスパズムに伴う遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia:DCI)および新規脳梗塞の発症を抑制するために使用される新規薬剤である.この研究ではクラゾセンタンを使用した当科での約 1 年間の初期治療経験について調査した.評価項目は患者背景,臨床的特徴,画像上スパズム,DCI/新規脳梗塞,体液貯留に伴う合併症,その他の合併症とした.対象は 32 例で 25 例にクラゾセンタンが使用された.クラゾセンタン使用群では 10 例(31%)に画像上スパズムが認められ,1 例(4%)に DCI,4 例(16%)に新規脳梗塞を認めた.体液貯留合併症は 13例(52%)で発生した.患者背景,臨床的特徴,クラゾセンタン以外の併用薬などで第III相試験と差はあるものの,結果は DCI や新規脳梗塞の予防におけるクラゾセンタンの有効性が示されるものであった.体液貯留合併症を回避するための理想的な体液管理プロトコルを確立するには,より多くの症例を蓄積する必要があると考えられた.