脳卒中の外科
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ISSN-L : 0914-5508
原  著
くも膜下出血後の脳血管攣縮予防におけるクラゾセンタンの初期治療経験
渡邊 亨荒木 芳生宇田 憲司家永 惇平加藤 信靖礒澤 佑一郎酒井 洋輔塚田 哲也石川 隆之坂本 悠介村岡 真輔永谷 哲也関 行雄齋藤 竜太
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2024 年 52 巻 4 号 p. 258-264

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抄録

クラゾセンタンはくも膜下出血後のスパズムに伴う遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia:DCI)および新規脳梗塞の発症を抑制するために使用される新規薬剤である.この研究ではクラゾセンタンを使用した当科での約 1 年間の初期治療経験について調査した.評価項目は患者背景,臨床的特徴,画像上スパズム,DCI/新規脳梗塞,体液貯留に伴う合併症,その他の合併症とした.対象は 32 例で 25 例にクラゾセンタンが使用された.クラゾセンタン使用群では 10 例(31%)に画像上スパズムが認められ,1 例(4%)に DCI,4 例(16%)に新規脳梗塞を認めた.体液貯留合併症は 13例(52%)で発生した.患者背景,臨床的特徴,クラゾセンタン以外の併用薬などで第III相試験と差はあるものの,結果は DCI や新規脳梗塞の予防におけるクラゾセンタンの有効性が示されるものであった.体液貯留合併症を回避するための理想的な体液管理プロトコルを確立するには,より多くの症例を蓄積する必要があると考えられた.

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© 2024 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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