脳卒中の外科
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特集 脳卒中外科の手術手技―原 著
前方循環の未破裂脳動脈瘤に対する直達術における必須ポイント ─適応と手術操作─
河本 俊介池田 剛阿久津 善光深谷 春介奥貫 かなえ阿久津 博義
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2024 年 52 巻 6 号 p. 418-425

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抄録

血管内治療と比較して直達術が優れている点は,動脈瘤の根治性,瘤周囲の正常血管に対する操作性,出血時のコントロールの確実性である.これらの利点を最大限に活かすべく適応を決定し行った直達術につき報告する.対象は過去10年間にクリッピング術を行った前方循環の未破裂瘤629患者663手術で,画像評価にてアプローチルート・静脈・瘤周囲のスペースを詳細に検討し,①穿通枝温存のための操作性確保,②瘤の近位および遠位の確実な血流コントロール,③瘤周囲の全方向の直視下観察,④至適なclip workのためのスペース確保,のすべてが可能と判断されるものに適応を限定した.手術においては,静脈の温存と脳愛護的な操作を徹底し,瘤の全周性剝離を原則としたが,癒着穿通枝の無理な剝離操作は行わなかった.術後早期のMRでは穿通枝領域の拡散強調画像高信号が5.4%,虚血以外の脳実質内T2変化が20.8%にみられたが,症候性合併症は認めなかった.術後のCTAでは残存neckなしが94.9%,2mm以下の残存が5.1%であった.術後5年以降に局所再発評価を行った371例(最長10年,平均6.4年)にて瘤の局所再発を認めなかった.

前述の要件を満たす瘤に適応を絞り,手術合併症なく良好な長期予後を提供することも直達術の重要な役割である.

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© 2024 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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