2025 年 53 巻 2 号 p. 75-81
近年,外視鏡は顕微鏡と比較して術者の疲労軽減,情報共有,教育などに有用性が示されている.今回われわれは脳血管障害手術において顕微鏡が外視鏡に移行可能かどうかを検討した.
2021年7月31日から2023年8月31日までに外視鏡を用いて直達手術が行われた脳血管障害手術 149例(クリッピングは破裂脳動脈瘤 45例,未破裂脳動脈瘤 64例,未破裂脳動脈瘤trap+bypass 1例,開頭脳内血腫除去術 14例,脳動静脈奇形 5例,STA-MCA 吻合術 10例,頚動脈内膜剝離術 9例,硬膜動静脈瘻 1例)を対象とした.
破裂脳動脈瘤,未破裂脳動脈瘤ともクリッピング術の手術時間に明らかな差を認めなかった.STA-MCA吻合術においては,術中に吻合部血栓を形成した症例は明らかに外視鏡群で少なく,また同じく外視鏡群において術後開存率は高く,手術時間は短い傾向があった.4 hands手術を行う際には,術者が左側に位置する場合は助手用モニターの位相を反転させて反時計回りに回転させる.術者が右側に位置する場合は助手用モニターの位相は反転させず反時計回りに回転させる.これにより,助手も違和感なく操作を行うことができた.
すべての術者がはじめて使用したが,いずれの術者も顕微鏡に変更することなく外視鏡のまま手術を完遂した.外視鏡は顕微鏡と比較して,術者の楽な姿勢,情報共有,4 hands手術に有用,などの利点があり,顕微鏡からの完全移行は可能であると考えられた.