2025 年 53 巻 3 号 p. 151-159
院内発症脳梗塞(IHIS)のうち,抗血栓薬休薬中の発症は1/4以上を占めるにもかかわらず,その現状は明らかとなっていない.本検討は,抗凝固薬(AC)および抗血小板薬(AP)の休薬中に発症したIHISの臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.2015年1月から2020年7月の間に大崎市民病院で発症したIHIS患者100例を対象とした.その中で発症時に抗血栓薬を内服または休薬していた患者を特定し,AC継続群,AP継続群,AC休薬群,AP休薬群の4群に分けた.患者背景や臨床転帰の各項目について,AC継続群とAC休薬群,AP継続群とAP休薬群をそれぞれ比較した.AC継続群(16例)とAC休薬群(10例)の間で,有意差のある項目は認められなかった.AP休薬群(9例)では,AP継続群(24例)と比較して,過去の脳卒中既往が多く(88.9% vs. 41.7%,p=0.021),CHA2DS2-VAScスコアの中央値(四分位範囲)が高かった〔6(5.8-7) vs. 5(3.5-6),p=0.006〕.AP休薬中に発症するIHISでは,脳卒中の再発や血栓塞栓リスクの高い患者が多く,APの休薬前には,これらの観点からリスク評価を行うことが望ましい.