2026 年 54 巻 2 号 p. 69-75
季節や気象状況によって脳卒中の発生頻度が変動することは,経験的に知られている.本研究では,くも膜下出血(SAH)患者の発症日の気象条件の特徴を明らかにすることを目的とした.当院で2014年1月から2023年12月の10年間に新規登録された内因性のSAH患者を対象とした.SAH発症日および前日・前週の大阪市の気圧(現地・海面),湿度(平均・最低),気温(平均・最低・最高・体感)を調査し,SAHの発症頻度と気象条件の関連について検討した.出現率が90パーセンタイル以上および10パーセンタイル以下に該当する範囲を「かなり高い(EH)」「かなり低い(EL)」,66.6パーセンタイル以上および33.3パーセンタイル以下に該当する範囲を「高い(H)」「低い(L)」,33.3パーセンタイルから66.6パーセンタイルの間に該当する範囲を「平年並(N)」と定義した.
対象は281例で,女性169例(60.1%),平均年齢62.1±15.6歳であった.SAHの発症には,最低気温および体感気温の前日差との関連がみられた(p=0.043,p=0.023).SAH発症当日の体感気温が前日と比較して低い(L)およびかなり低い(EL)場合に,SAHの発症が有意に多くみられた(p=0.0004,p=0.0002).一方,前週との気温の変化に関しては,SAHの発症との関連は認められなかった.気圧や湿度に関しては,前日および前週いずれの変化においても,SAHの発症との関連は認められなかった.また,動脈瘤性SAHに関しても,発症当日の体感気温が前日と比較して低い(L)およびかなり低い(EL)場合に,SAHの発症が有意に多くみられた(p=0.0007,p=0.0002).
SAH発症日は前日と比較して体感気温が低下している日の割合が高く,相対的な冷感刺激がSAH発症の一因となっている可能性が示唆された.