システム・ダイナミクス
Online ISSN : 2434-2025
実務者によるシステム・ダイナミクスモデル構築手法の開発
岡田  伊策 高橋 裕稗方 和夫
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 18 巻 p. 1-16

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抄録

システム・ダイナミクスモデルによるシミュレーションは、意思決定者の心理的バイアスや過去の事例や経験への過度な依存を排除し、モデルとその振る舞いの共通認識を形成できることから、不確実性下の経営意思決定に有効であることが一般に知られている。一方で、意思決定に利用するためのシステム・ダイナミクスモデルを構築するには、意思決定を行う対象業務や文脈への十分な理解と、システム・ダイナミクスモデリングの習熟の両方が必要となり、コストや人的リソース面で困難が大きい。本論文では、現場起点で、精緻かつ詳細な情報を調査・収集、それに基づいてシステム・ダイナミクスを用いて詳細な全体モデルを組み上げるボトムアップアプローチモデリング手法に着目した。この手法において、モデリングに習熟していない実務者によるモデル構築を支援する詳細手順を提案する。提案する手順は、特に知識労働現場の実務者の知識や情報を、ワークショップ形式により収集し、それらからストック・フロー変数を特定し、システム・ダイナミクスモデルの骨組みを作成する。その後、同様にワークショップで得られた情報から補助変数候補を作成し、モデルの粒度を適切なレベルに詳細化する。提案手法の有効性は、自動車部品メーカーの新商品開発プロジェクトに対する適用事例において検証した。

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© 2019 システム・ダイナミックス学会日本支部
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