2013 年 12 巻 p. 81-108
2000年前後から、多くの研究が1970年代から80年代にかけて盛んに研究された文法形態素の習得・使用に見られる普遍性、および第二言語学習者の産出における誤りの原因の解明に取り組んでいる。研究者の立場は、大まかに言って、第二言語習得は他の一般的知識の習得と同様、基本的に「刺激の記憶」「習慣形成」に基づくものであり、その文法形態素の「目立ち度」や「頻度」が重要な要因であるという立場(Goldschneider & DeKeyser, 2001ほか)と、第二言語習得も母語習得と同じ知識基盤に基づいており、形態素の使用には学習者が持つ心理的文法知識(中間言語)が大きく関わっていると考える立場(若林,1997ほか)に分けられる。本稿ではまず、第二言語学習者の持つ中間言語 (Selinker, 1972)の心理的実在性を明らかにし、中間言語が他の自然言語と同種の「言語知識」であることを示した上で、6つの研究のデータから、日本人英語学習者の3人称単数現在-sの使用に関する知識基盤とその使用について考察する。その結果、第二言語学習者による文法形態素習得・使用は、記憶などの一般的な要因も一部関わっているものの、中間言語が重要な役割を果たしていることは確かであり、言語学に基づく緻密なデザインに基づく実証的研究が、学習者の知識の解明へのカギとなることが明らかにされる。