2023 年 22 巻 p. 25-49
本基調論文では第三言語習得における言語間の影響(CLI)の問題を論じる.CLIは既に習得されている言語の構造の共活性化であるとらえられるべきであり, それは特性ごとに生じ, 既に習得されているどちらかの言語, あるいは両言語に起因しうるものである.実験デザインの比較的新しい手法である減算的言語グループデザインとその長所を紹介する.広範囲に亘る例を用い、第三言語習得において素性の束がどのように再構築されるのかを検証することに加え, パラメター階層のような新しい統語的概念が、これまでに報告されている実験結果によって支持されるかどうか考察する.日本語を検証した研究に重点をおきつつ, ある実験的証拠を再考する.スカルペルモデルが予測する, CLIに影響を与えうる他の要因についても論じる.本稿では, 第三 / n言語の習得は, 形式的な見地からの言語の検証への貴重な洞察をもたらすことを示したい.