2023 年 11 巻 p. 25-34
家族は「やすらぎ」や「あたたかさ」などの肯定的なイメージを持たれやすいが,家族構成や家族関係をはじめ,その実態は多様なものである。近年の学校教育では多様性の包摂が求められており,児童の生活と切り離すことができない家族の多様性も学ぶべき内容である。しかし,家族の捉え方を明記している家庭科・特別の教科道徳・生活科の学習指導要領解説には,家族を肯定的に捉える文言のみがみられる。偏った家族像は多様な家族を生きる児童を排除するだけではなく,家族をめぐる問題に気付く力や多様性を学ぶ機会を児童から奪いかねない。家族が描かれつつも解説に文言がない国語科においても,分析の結果,教材における家族の描かれ方に偏りがみられた。しかし,フレイレに端を発する批判的リテラシーを援用しながら,ことばを通して自分の家族観を批判的に捉えなおすことにより,家族の多様性に向き合う小学校国語科授業を考えることが可能である。