初等教育カリキュラム研究
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Ⅰ 研究論文
藤井清水の童謡創作における理念形成過程の考察
—「我が国の伝統的な音感覚」との接点をめぐって—
伊原木 幸馬
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2025 年 13 巻 p. 51-60

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抄録

本研究の目的は,藤井清水(1889-1944)の童謡創作における理念形成過程を考察し,藤井の創作した童謡作品 と「我が国の伝統的な音感覚」との接点を明らかにすることである。藤井は,東京音楽学校に入学以前より,西洋音楽を独学で学び,日本民謡を五線に採譜したり,その音楽的な特徴を考察したりするなど,民謡に対する意識の萌芽が確認できた。東京音楽学校入学後は上原六四郎,高野辰之らの講義を受け『俚謡集』『俚謡集拾遺』に触発され,民謡への認識を大きく方向づけられていった。東京音楽学校卒業後は,民謡調査・採譜を重ね,資料調査や音楽分析を行う中で,西洋音楽と日本の音組織との融合を模索しつつ新しい童謡作品を創作していたことが明らかになった。藤井の作品創作における理念形成過程を考察することにより,「我が国の伝統的な音感覚」と童謡作品との接点をめぐり,学校教育における教材選択の拡充につながる手がかりを得ることができた。

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