物理探査
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論文
MPS 法による弾性波動伝播現象と破壊現象の数値シミュレーション
武川 順一山田 泰広三ケ田 均芦田 譲
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2008 年 61 巻 2 号 p. 169-179

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抄録

 粒子法は,差分法や有限要素法のような要素・格子を用いて解析対象を離散化する手法に比べて,解析対象のモデル化か容易である点や,大変形・破壊を容易に扱える点に特徴があることから近年注目を集めている。本研究では,粒子法の一種であるMPS (Moving Particle Semi-implicit) 法を用いて,波動伝播現象と破壊現象を同一のシミュレータで再現することを試みた。MPS 法は偏微分方程式に対する一般的な離散化手法であるので, DEM (Distinct Element Method) のように入力パラメーターのフィッティングを行うプロセスは必要ない。本研究では,まず, MPS 法による弾性解析のアルゴリズムが弾性波動伝播現象を正確に再現できるかを,差分法の結果と比較することにより検証した。その結果, MPS 法によるシミュレーション結果は体積変化を伴う変形を伝える P 波と圧力変化を伴わない変形を伝える S 波を再現しており,差分法による結果ともよく一致した。また,数値安定性についても検討を行った結果,差分法と同様,媒質の伝播速度・離散化幅・時間刻みによって安定性が決定されることが確認された。続いて,不連続境界面に弾性波が入射した際に反射波が励起される様子を MPS 法によりシミュレーションした。その結果,P 波入射により励起される PP, PS 変換波と,S 波入射により励起される SP,SS 変換波が再現されることが示された。
 次に,弾性波動伝播現象と破壊現象が同時に起こる物理現象として,本研究ではホプキンソン効果に着目し,これを MPS 法により再現することを試みた。その結果,棒の端面に加えた圧力波が媒質を伝播していく様子と,その圧力波が自由端反射して発生した引張力によって棒が破断する現象をシミュレートすることができた。また,破断した破片が飛翔してゆく状態までを再現することができた。このことから,要素や格子を用いる手法では表現することが困難な不連続な現象を, MPS 法を用いることにより同一のシミュレータで再現できることが示された。

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© 2008 社団法人 物理探査学会
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