抄録
土中水の3次元的浸透を簡易に把握する手法の検討を目的として,シラス台地で実施した地下水涵養試験において井桁状に配置した4測線で連続的に比抵抗法2次元探査を行い,制約付非線形差トモグラフィ解析により2次元の比抵抗変化率分布を求めた。涵養開始前の比抵抗分布は地質構造を反映し,複数測線の検討から調査地区の地質構造は層構造を持つことがわかった。また,涵養開始後の比抵抗変化はおおむね飽和度の変化を反映していると考えられ,2次元差トモグラフィ解析により土中水の動態が把握できることが示された。涵養中は,二次シラス層に沿った比抵抗の低下部の広がりが観測され,鉛直浸透に加えて土中水が二次シラス層に沿って水平方向にも広がったものと考えられた。一方,ローム層では中性子水分検層による体積含水率分布および差トモグラフィ解析による比抵抗の双方に変化が見られず,選択流の発生が推察された。また,涵養開始直後は涵養条件から不均質性の高い浸透が生じたと推定されたが,各測線断面ではこの涵養状況の違いを反映した比抵抗変化率分布が得られた。これらの結果より,複数測線の2次元差トモグラフィ解析により,土中水の鉛直および側方方向への浸透を含めた3次元的な涵養状態を経時的かつ簡易に把握できることが示された。