日本植物病理学会報
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原著
コシヒカリマルチラインにおける構成同質遺伝子系統の計画的変更によるイネいもち病真性抵抗性の持続的利用の検証
石川 浩司堀 武志黒田 智久松澤 清二郎岩田 大介渡部 真帆佐藤 秀明
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2023 年 89 巻 3 号 p. 136-148

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抄録

新潟県が2005年に導入したコシヒカリマルチラインは,侵害レースの頻度上昇や分布拡大を抑制し発病抑制効果を維持するため,使用する真性抵抗性を計画的に変更している.この利用方法の妥当性を検証するため,侵害レース多発生地区を含む全県でレース頻度を調査した.

本マルチラインの導入後2~3年で優占レースが001.0,003.0から007.0,037.1に交代する急激なレース頻度の変化が認められた.局地的に侵害レースが高頻度で確認された複数の地点で継続してレース頻度を調査した.その結果,侵害レースは地域内の伝染環で越冬し,感染可能割合が高い年に頻度が高くなり,構成系統の交代により感染可能割合が30%となった年に頻度が著しく低下した.前年の侵害レースの頻度が低いほど当年も確認される確率が低く,感染可能割合30%の年が2~3年続くとその後に感染可能割合が再び高くなっても侵害レースは確認されなかった.これらから,構成系統の交代が侵害レースの頻度上昇や分布拡大の抑制に有効なことが明らかとなった.

コシヒカリマルチラインは,導入から18年間,発病抑制効果を維持しており,計画的に構成系統を変更するマルチラインの本栽培法は,イネいもち病の真性抵抗性遺伝子を持続的に利用する方法の1つとして有効であると考えられる.

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© 2023 日本植物病理学会
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