物理探査
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ケーススタディ
旧高千穂鉄道沿線における地下速度構造および地震動の空間変動評価
岩田 直泰津野 靖士
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2015 年 68 巻 2 号 p. 91-100

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抄録
 地震発生時において強い地震力が鉄道施設へ作用した場合,鉄道構造物の被害発生や列車の走行安全性の低下が懸念される。このような場合,鉄道事業者は可能な限り早く列車を減速・停止させ安全を確保する。列車停止の後には事前に定められたルールに従い,軌道や構造物などの鉄道施設に変状が生じていないかを目視により確認する。運転の停止や再開の判断には路線に沿ってほぼ一定間隔で設置されている地震計の情報を用いるが,地震観測点以外の地震動を素早く正確に推定できれば上記の安全確認の要否判断や実施範囲の適正化につながり列車停止時間の縮減を図ることも可能となる。
 著者らは,鉄道路線に沿った詳細な地下速度構造と地震動の推定手法を提案している。本研究では,提案手法を旧高千穂鉄道に沿った約600mの盛土区間に適用することを試みた。対象は谷を盛土で渡り,尾根を切通で貫き,再び谷を盛土で渡る区間であり,この盛土,切通,盛土の3地点に地震計を設置して地震観測を行った。地下速度構造と地震動の推定手順は,まず物理探査手法である表面波探査と微動アレイ探査により盛土の地震観測点2地点のS波速度構造を求めた。次に,約20m間隔で測定した単点微動データからH/Vスペクトル比を計算し,地震観測点のS波速度構造に基づきH/Vスペクトル比の卓越周波数を用いて1次元のS波速度構造を求め,それらを水平に連続させることにより路線に沿った2次元的な地下速度構造を推定した。そして,切通地点で観測された地震動の1/2倍が基盤入力地震動に近似すると仮定し,線状に連続して求めたS波速度構造と1次元重複反射理論から路線に沿った地震動を推定した。地盤上における推定地震動と観測地震動はよく一致し,路線に沿った地下速度構造および地震動の推定に対する本手法の有効性を確認した。
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© 2015 社団法人 物理探査学会
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