物理探査
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論文
空中重力偏差法探査データから推定される霧島火山西部の密度構造
西島 潤
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2016 年 69 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

 空中重力探査は海外を中心に近年測定精度が向上してきており,中でも航空機搭載型の重力偏差計測技術はめざましく進歩している。本研究では,鹿児島県霧島火山西部地域を対象としてJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)によって行われた「地熱資源ポテンシャル調査のための空中物理探査」の空中重力偏差法探査データを用いて地下の3次元密度構造を推定し,得られた密度構造とこれまでに本地域で行われた地熱資源調査結果との比較を行った。この結果,本地域の深部(標高−1500~−1000m)では,大霧地熱発電所の主貯留層となっている銀湯地区や高温の噴気・温泉・変質帯などの地熱徴候が分布する調査地域北部および南東部高岡山周辺において高密度域が見られた。特に北部の高密度域には,本地域に見られる西南西−東北東方向の断層と平行する傾向が見られた。また,南東部の高密度域を取り囲むように低密度域が分布している。地熱貯留層が分布する標高−500~0mの範囲では,深部で見られた北部の高密度域はいくつかの小さな高密度域に分岐している。この内,銀湯地区と白水越地区の間に存在する高密度域は,標高−300mでの圧力分布や温度分布との比較から,両者の地熱貯留層を分けている可能性が高い。また,この高密度域の周囲には銀湯地区や白水越地区に卓越する西南西−東北東方向の断層と同じ方向性を持つ低密度域が存在する。この低密度域は高密度域との密度差が小さいことや坑井の温度分布との比較などから地熱貯留層が含まれる破砕帯や断裂帯を捉えている可能性が高い。空中重力偏差法探査は本地域のような地上重力測定点密度の稠密化が困難な火山地域において地下の詳細な密度構造推定に有効であることが明らかになった。

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© 2016 社団法人 物理探査学会
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