物理探査
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ケーススタディ
空中磁気データによる地熱地域の3次元地下イメージング解析
─秋田焼山を例として─
大熊 茂雄中塚 正
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2016 年 69 巻 1 号 p. 41-51

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抄録

 秋田焼山は仙岩地熱地域北西端に位置する第四紀火山であり,周辺の山麓部で地熱開発が行われ現在複数の地熱発電所が稼働中である。当該地域では新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) や地質調査所(現産業技術総合研究所)等によって地熱調査に係わる諸調査が行われ,空中磁気データの解析も行われた。例えば,かつて著者等は付近で行われたボーリング調査に伴う岩石磁気測定結果や地質断面図を拘束条件として,フォワードモデリングにより秋田焼山の磁気構造を推定した。この結果,北麓に伏在する貫入花崗岩体に加え南山腹には逆帯磁の古玉川溶結凝灰岩の伏在をモデリングできた。しかしながら,この作業には先験情報と相当量の時間と労力が必要であった。一方,その後電子技術の発展に伴いコンピュータ環境が向上し,磁気異常の3次元インバージョンも実用化された。そこで,今回国内外の火山での磁気異常の解析に用いた3次元イメージング法を秋田焼山にも適用し,先のフォワードモデリングの解析結果との比較検討を行った。その結果は,北麓の伏在貫入花崗岩体の分布など概ね既往の解析結果と整合的であった。さらに,3次元イメージングによって,既往の解析結果以外にも新たな磁気構造の推定が可能となった。例えば秋田焼山南方の倉沢山付近の地下深部を中心として顕著な負の磁化強度域が分布し,付近に露出する逆帯磁の玉川溶結凝灰岩と下位の古玉川溶結凝灰岩の推定分布域に対応するものと考えられる。また,秋田焼山北麓の貫入花崗岩体伏在域のさらに東方でも高磁化強度域が分布し,その北方に位置する大沼地熱発電所の熱源に係わる可能性もある貫入岩体の伏在も示唆された。このように,磁気異常の3次元イメージング解析により地熱地域の地下構造を推定することが以前に比べ格段に容易に行えるようになった。今後は,高分解能空中磁気探査を実施して新たな磁気異常データを取得し,これに3次元イメージング法を適用することによって,地熱地域の詳細な地下構造の推定の進展が期待される。

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© 2016 社団法人 物理探査学会
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