2020 年 73 巻 p. 177-191
電気ダイポールによって誘導される水平多層構造中の電磁場はベクトルポテンシャルを用いて導出することができ,これまで多くの研究がなされてきた。しかしながら,その導出が詳細に記載されている論文やテキストブックを探すのは容易ではない。本論文の主たる目的は,電気ダイポールによって誘導される水平多層構造中の電磁場の導出を詳しく記載し,導出した電磁場を計算する汎用性の高い計算プログラムを開発,またその計算例を示すことにある。開発したプログラムでは送受信は任意の層に配置することができ,各層の比抵抗はその異方性を考慮することができ,さらに比抵抗は複素数として定義することが可能である。数値計算結果から,本手法によって水平多層構造中の電磁場が適切に計算されることが示された。また,開発した技術・コードは1次元順計算に用いることができるだけでなく,積分方程式法におけるバックグラウンド場やグリーン関数の計算,さらに2次場を解く有限要素法や差分法における1次場の計算にも用いることができる。