物理探査
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ケーススタディ
常時微動の2点アレイ位相速度計測における振源係数の効果
白石 英孝浅沼 宏
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2023 年 76 巻 p. 1-13

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抄録

 2点アレイによる微動位相速度計測を対象として,アレイへの入射特性に依存する複素コヒーレンス関数高次項の挙動について,理論的および実観測記録をもとにした検討を行った。入射特性については,白石ほか(2005)において入射波の方位角および方位別寄与率によって理論的に定義された振源係数を用いた。また実観測記録については,微動の入射条件が異なると考えられる3カ所の調査地点,すなわち主要振源と考えられる幹線道路が周りを囲む都市部1カ所,および特定の幹線道路が近傍(約300 m)または遠方(約800 m)に位置する田園地帯2カ所で,SPAC法による位相速度計測結果を基準として比較検討を行った。その結果,以下の3点が明らかとなった。1)最大誤差を与える2次の項に乗じられた振源係数の周波数特性は,調査地点およびアレイごとに異なり,時間変動がきわめて大きい(変動係数は数10~100%を超える)。2)2点アレイの相対誤差は-20~30%の範囲にあって振源係数の周波数特性と連動し,その符号と絶対値が誤差の過大・過小を決定している。3)都市部の観測記録で求めたF-Kパワースペクトルから入射波の方位別寄与率を推計し振源係数の生成プロセスをトレースしたところ,係数の符号と大小は卓越する寄与率成分の方位分布と密接に関係し,非等方的な分布であっても正しい位相速度を与えうる微小値となる場合があった。導出した振源係数はSPAC法による値とも整合した。

 これらの結果から,振源係数はアレイへの微動入射特性や誤差の挙動と密接に関連することが明らかであり,2点アレイによる高精度位相速度計測の実現に向けた有用な指標になるものと考えられた。

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© 2023 社団法人 物理探査学会
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