地震発生直後に震度情報や地震警報等を速やかに発信するためには,地震観測網や通信ネットワークが構築・整備されていることに加えて,高い品質のデータを取得できる地震計が適切な環境に設置されている必要がある。鉄道では早期地震警報システムの信頼性向上の取り組みとして,主に変電所に設置される地震動を計測・収録する鉄道の地震計に対して電磁波の影響を小さくするように鉄道用のEMC規格を適用している。一方で,地震動を計測・収録する地震計に関しては,気象庁が実施している計測震度計の検定のように一定の基準を満たすような記録された地震動の精度確認は行っておらず,鉄道で使用している地震計の信頼性検証は実施されていない。そのため,本研究では,鉄道分野における地震警報の信頼性を検証することを目的として,公益財団法人鉄道総合技術研究所が保守・整備している首都圏地震観測網の笠間観測点(KSM)での多種類の地震計による臨時地震観測を通じて,地震データの品質が鉄道の地震警報に与える影響評価について検討した。
最初に,微動のキャリブレーション・テストにより地震計の自己ノイズを検討した結果,岩盤サイトであるKSMにおいて微動を適切に記録するためには,0.12 Hz以上の周波数帯域において-120 dB程度の微動パワー・スペクトル密度を計測できる必要があることを示した。また,全ての地震計で記録された微動加速度データの平均パワーは10-4 cm2/s4以下であり,加速度振幅0.01 cm/s2以上の振動を計測する際は,データ精度について特に問題はないことが指摘される。次に,地震データの品質が,鉄道で適用している2種類の地震警報(規定値超過判定手法およびC-Δ法)に与える影響評価について検討した。規定値超過判定手法に対して,全地震計において10 cm/s2を超過した値10.1~10.7 cm/s2(平均値:10.4 cm/s2,標準偏差:0.2 cm/s2)にある程度のばらつきが見られることから,本観測データに対しては,地震計により規定値を超過するタイミングはコンマ数秒のズレが生じることを明らかにした。また,C-Δ法の震央距離推定に対して,気象庁一元化震源との残差平均値±標準偏差は0.05~0.6 km(常用対数)の範囲内に収まっており,本観測データにおいて,異なる地震観測データがC-Δ法による震央距離推定に与える影響はさほど大きくないことを明らかにした。一方で,震央方位推定に対しては,震央距離推定と比較して,気象庁一元化震源との残差平均値±標準偏差は-90°~90°の範囲にあり,C-Δ法による震央方位推定に与える影響は相対的に大きいことを明らかにした。