日本CCS調査株式会社は,経済産業省(2018年度以降はNEDO)からの受託事業として,北海道苫小牧市でCCS実証試験に取り組んでいる。本実証試験では,2016年4月から2019年11月までに累計30万トンのCO2を圧入し,これらのCO2が安定して地下に貯留されていることを確認するために,貯留層の圧力・温度,CO2の挙動・分布,周辺の地震活動,海洋環境に関するモニタリングを圧入開始前から現在まで継続している。繰り返し弾性波探査は,モニタリングの一環としてCO2の挙動や分布把握のために実施した。主に対象とした貯留層は陸域から数km沖合,深度約1,000 mの深部塩水層で,探査範囲の水深は10 m未満から40 m程度の浅海域である。データ取得では,取得記録の再現性(発振・受振点位置および品質)に留意しながら,3Dに加えてコスト削減を念頭に2D弾性波探査も試行し,各探査手法の有効性を確認した。データ処理では,圧入開始前に取得したベースライン調査記録と,圧入開始以降2022年度までに取得した計6回の繰り返し調査記録を用いてタイムラプス処理を実施した。繰り返し弾性波探査により,2つの重要な知見が得られた。第1に,CO2圧入の影響による貯留層付近の速度低下とそれに伴う振幅変化を可視化することができた。第2に,圧入期間中および30万トン圧入終了以降におけるCO2の経時的挙動を捉えることができた。これらの知見は貯留層シミュレーションおよび波動シミュレーション結果とも整合的であり,繰り返し弾性波探査がCO2の挙動や分布把握に有効な手法であることを示している。