尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編
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地方都市における民間楽隊の成立と普及に関する検証
明治期の熊本
森 みゆき
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2020 年 52 巻 p. 89-100

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抄録

明治20年代以降に,それまで軍楽隊が行っていた学校行事や地域の祝祭行事等の要請が急増したことにより,民間による楽隊が設立し全国的に広まった。民間楽隊に関する従来の研究は東京と関西が中心であり,地方都市を対象とした研究の必要性から筆者は九州日日新聞(21年から45年)における西洋音楽関連記事調査(約4500件)を基に,熊本での楽隊成立の動向を検証した。成果として,民間楽隊の種類(市町村名のついた楽隊,学校楽隊,青年団による楽隊,商店楽隊,芸妓楽隊,孤児院楽隊)と特徴等が明らかになった。さらに,その地域に初めて設立した楽隊は市町村名がついた名称になっており,設立までの経緯,設立に関わる経済的・社会的支援の構図が浮かび上がった。特に,民間楽隊設立初期には,楽隊としての営利を求める自主的な経営という要素は薄く,地域の経済的・社会的な有力者等の支援のもとに,地域ひいては国家のための行事を支える市民団体のような性格を有していたことが明らかになった。

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© 2020 学校法人尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
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