生活経済学研究
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論文
老後生活費への不安感の要因分析
大塚 忠義 谷口 豊
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 55 巻 p. 15-30

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抄録

生命保険文化センター(2016年)の調査によると、回答者の85.7%が自分の老後生活に不安を感じている。一方で、谷口・大塚(2020)で「全国消費実態調査」をもとに行ったシミュレーションでは、80%を超える世帯が生存中に貯蓄が枯渇する可能性が低いという結果を得た。このような差異は、現役世代が老後生活に対して感じている不安感は実態より悲観的であることを示唆している。 本稿の目的は、貯蓄ゼロの蓋然性が低いにもかかわらず老後生活に不安を感じる世帯の属性を分析し、老後生活費への不安感の要因を明らかにすることである。その結果、次のような知見を得ることができた。 生存中に資産が枯渇する可能性が低いにも関わらず不安感を持つ要因は年齢ではなく世帯年収であり、不安感をもたらす世帯年収は年齢とともに低くなると考えられる。また、老後生活費を公的年金に依存している割合が高いほど老後生活の不安感は高い傾向にあると推測される。逆に、農林漁業者等定年がなく老後も勤労所得により生活費を賄える世帯については加齢とともに不安感が減少する傾向にあることがわかった。

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