生活経済学研究
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論文
メンタル・バジェッティングの傾向は個人の金融資産残高の蓄積を促すのか
末廣 徹
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 56 巻 p. 33-48

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抄録

本稿では、行動経済学におけるメンタル・アカウンティング(心理会計)のバイアスの一種であるメンタル・バジェッティング(心理的な予算の割り当て傾向)と個人が保有する金融資産残高の関係をインターネットアンケート調査の結果を用いて分析した。メンタル・バジェッティングの傾向がある個人は予算を管理することと同時に金融資産の管理を積極的に行う傾向があることから、金融資産の蓄積にもプラスの効果があると言われている。しかし、管理したからと言ってそれが最適であるとは限らない。予算の割り当てを誤れば、金融資産の蓄積にマイナスの影響を与える可能性もある。伝統的な経済学が想定するように、仮に家計が最適な選択を採ることが可能であるとすれば、予算を割り当てることは望ましいことではない。本稿では、直接的にメンタル・バジェッティングと金融資産残高の関係を分析することにより、メンタル・バジェッティングの傾向がある個人は保有する金融資産残高が少ない傾向がある可能性を示した。つまり、メンタル・バジェッティングの傾向がある個人は予算を管理することによって金融資産の蓄積が阻害されている可能性が高いことが明らかになった。

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