2023 年 57 巻 p. 1-14
公的介護保険制度は全国一律の制度であるが、地域によって差が見られる。これは、地域ごとの人口構成、人口動態の差異に加え、地域の特性や生活習慣の違い等によるものと考えられている。これら市区町村で異なる介護給付費等の状況を比較・分析し多くの市区町村と異なる数値を示す地域の特性を分析・考察することは、公的介護保険の公平性と持続可能性を確保するために重要である。 本稿の目的は、市区町村の介護給付費等の妥当性を評価するための手法を提案し、それに基づき設定する標準的な範囲から逸脱している市区町村を特定したうえで、当該市区町村の特性を分析・考察することである。 分析の結果、平均介護給付費を構成要素に分解した9項目についてほとんどの市区町村が標準範囲に該当することを確認した。特に、要介護認定率は比較可能な指標に変換するとほぼ全国一律の状態にあると推定される。この結果は介護費用等の市区町村の差異に関し分析した多くの先行研究と異なるものである。