生活経済学研究
Online ISSN : 2424-1288
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57 巻
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論文
  • 大塚 忠義, 冨樫 充, 谷口 豊
    原稿種別: 論文
    2023 年 57 巻 p. 1-14
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    公的介護保険制度は全国一律の制度であるが、地域によって差が見られる。これは、地域ごとの人口構成、人口動態の差異に加え、地域の特性や生活習慣の違い等によるものと考えられている。これら市区町村で異なる介護給付費等の状況を比較・分析し多くの市区町村と異なる数値を示す地域の特性を分析・考察することは、公的介護保険の公平性と持続可能性を確保するために重要である。 本稿の目的は、市区町村の介護給付費等の妥当性を評価するための手法を提案し、それに基づき設定する標準的な範囲から逸脱している市区町村を特定したうえで、当該市区町村の特性を分析・考察することである。 分析の結果、平均介護給付費を構成要素に分解した9項目についてほとんどの市区町村が標準範囲に該当することを確認した。特に、要介護認定率は比較可能な指標に変換するとほぼ全国一律の状態にあると推定される。この結果は介護費用等の市区町村の差異に関し分析した多くの先行研究と異なるものである。
  • 品田 雄志
    原稿種別: 論文
    2023 年 57 巻 p. 15-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、信用金庫における収益と資産構成の変化が経営健全性に与える影響について考察するため、2001年度から2020年度までの20年間のデータを使用して検証した。当該期間は、収益の多様化ならびに資産構成の多様化がほぼ一貫して進行していた時期に当たる。分析に当たっては、一般化モーメント法(GMM)を用いた。 分析の結果、収益多様化の進展や資産構成の分散化が経営健全性に資するという結果は得られなかった。このことからは、信用金庫経営において、範囲の経済性やポートフォリオ理論が必ずしも機能していないことを示唆している。また、預貸率の上昇が経営健全性に資するという結果となったことから、まずは預貸率の上昇に注力するべきとの示唆を得た。
生活経済学会第38 回(2022 年度)研究大会 共通論題
生活経済学会38 回研究大会会長賞受賞論文
  • ―日本とノルウェーとの比較から
    佐野 潤子
    原稿種別: 論文
    2023 年 57 巻 p. 61-81
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、ジェンダーギャップ指数が世界3位と高いノルウェーの夫婦(カップル)の金融資産状況を比較することで、現役世代の夫婦の金融資産額の差の要因にジェンダー意識(性別役割分業意識)が関わっているかを検討した。 ノルウェーでは、夫婦の金融資産額の差は、夫と妻の年収の差に比例していたが、日本は、特に妻の就業形態がパートタイムと専業主婦の場合において、夫婦の年収の差と比較して、夫婦の金融資産額の差が小さくなっていた。 日本における夫婦の金融資産額の差は、妻年齢が高いほど大きくなり、妻年収と妻家計意思決定度が高いほど小さくなっていた。日本では、家計の意思決定権が収入の多寡ではなく、ジェンダー意識(性別役割分業意識)によって支配されていた。すなわち、日本ではノルウェーと比較して、夫の収入は夫のものではなく、家族のものだとする回答が多かった。生活費、貯蓄プラン、資産運用に関しては、ノルウェーでは、夫婦二人で決めているという回答が半数を占めるのに対して、日本では、夫婦二人で決めているという回答が1/4程度と少なく、生活費や貯蓄プランは妻が決めているという回答が過半数を占めていた。 有償、無償の貢献がともに資産保有に反映される仕組みは、夫名義と妻名義の金融資産額の格差の是正にはつながっており、一見不平等を感じさせないが、夫婦の金融資産額を合わせた世帯の豊かさにはつながらない。世界有数の長寿社会で生き抜くには、ノルウェーのように夫と妻のそれぞれの資産形成をすすめ世帯金融資産額を高めることが必要である。
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