本研究では、ジェンダーギャップ指数が世界3位と高いノルウェーの夫婦(カップル)の金融資産状況を比較することで、現役世代の夫婦の金融資産額の差の要因にジェンダー意識(性別役割分業意識)が関わっているかを検討した。
ノルウェーでは、夫婦の金融資産額の差は、夫と妻の年収の差に比例していたが、日本は、特に妻の就業形態がパートタイムと専業主婦の場合において、夫婦の年収の差と比較して、夫婦の金融資産額の差が小さくなっていた。
日本における夫婦の金融資産額の差は、妻年齢が高いほど大きくなり、妻年収と妻家計意思決定度が高いほど小さくなっていた。日本では、家計の意思決定権が収入の多寡ではなく、ジェンダー意識(性別役割分業意識)によって支配されていた。すなわち、日本ではノルウェーと比較して、夫の収入は夫のものではなく、家族のものだとする回答が多かった。生活費、貯蓄プラン、資産運用に関しては、ノルウェーでは、夫婦二人で決めているという回答が半数を占めるのに対して、日本では、夫婦二人で決めているという回答が1/4程度と少なく、生活費や貯蓄プランは妻が決めているという回答が過半数を占めていた。
有償、無償の貢献がともに資産保有に反映される仕組みは、夫名義と妻名義の金融資産額の格差の是正にはつながっており、一見不平等を感じさせないが、夫婦の金融資産額を合わせた世帯の豊かさにはつながらない。世界有数の長寿社会で生き抜くには、ノルウェーのように夫と妻のそれぞれの資産形成をすすめ世帯金融資産額を高めることが必要である。
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